ミラクル☆トレイン
[ 2011.04.01(金) 23:30 ]
SSあり

エイプリルフールなので

季節イベントネタ、今回はギリギリで当日更新です。

以下、新宿×六本木のSSです。
描写レベルは(ぬるいですが)朝チュン程度。


「ねぇ、凛。 僕のこと好き?」
俺の隣に寝そべっていた史が、ふいに尋ねてきた。

深夜のベッドの中。
肩にパジャマを羽織っただけの恋人の口から発せられる質問としては、それは非常に典型的だ。
「好きだよ」
必然的に、俺の答えも典型的なものになる。
だが、その後の史の行動は、全く予想外のものだった。

史は俺の顔を覗きこんで眉をひそめ、それからごろんと俺に背を向けた。
「……嘘つき」
そう言い放つ声のトーンは、先ほどの甘えた声とは比べ物にならないほど、暗く重い。
史はさらに言葉を続けた。
「今朝気づいたんだよね……凛は嘘つくとき、左の眉の端がちょっと動くの」

「嘘だったんだ……。 凛の……バカ」

ひどく辛そうな声が、俺の胸に刺さる。
俺が嘘をつくときに癖があるというのは初耳だし、自分では全く意識していない。
もっとも、癖というのは自分では認識しづらいものなので、そうなっているのかもしれないが。
だが、俺が史のことを好きだというのは、嘘じゃない。

「史。 俺が嘘をつくときの癖はともかく、お前が好きだっていうのは嘘じゃないぞ?」
俺は史の背中に向けて、声をかけた。
だが、返ってきた言葉は、さらに俺の胸をえぐった。
「凛なんか……凛なんか、もう知らない」

「史、俺は本当に……っ」
「……っ」
俺が声を荒げるのと同時に、史の肩が震えだした。
最初は、泣いているのかと思った。
だが、その口から漏れている噛み殺した声は、泣き声じゃない。

それはむしろ、笑い声だ。

「……凛、今日は何月何日?」
「へ?」
唐突な質問に、俺は思わず間の抜けた返事をしてしまう。
ベッドサイドに置かれた時計を見ると、針は夜中の12時を回っている。
日付が変わったということは……今日は4月1日だ。

……ん? 4月1日?

「史、お前……っ」
今日は4月1日、エイプリルフールだ。
つまり、さっきの史の発言は、全部嘘ということか?
史の肩を掴んで無理やり振り向かせると、史はこらえきれないという風に笑い出した。
その反応は、俺の推測を裏付けている。

「もう、凛ったら、引っかかりすぎ……」
くすくすと笑う史を見ていたら、全身から力が抜けていった。
誤解されたわけではなかったのは、よかったが……。

「さっきの……俺が嘘つくときの癖っていうのも嘘か?」
「うん。 凛は嘘つくの上手いから、たぶん気づかないと思うよ」
史は楽しそうに俺の頬を撫で回して、目を細めた。
そういう小悪魔的な仕草がとても愛らしくて、文句を言う気が完全に失せてしまった。
どうやら、すっかり史の術中にはまってしまっているらしい。
「……俺は、そんなに嘘つかないよ」
「ほんとかなぁ。 ま、そういうことにしといてあげる」

史はなおも楽しそうにじゃれついてくる。
その手を取って、今度は俺が尋ねる。
「史」
「……何?」

「俺のこと、好き?」
史は一瞬だけ目を丸くして、それから笑顔を見せた。
まぶしくて、甘くて、溶けてしまいそうな――例えるなら、蜂蜜のような笑顔。
「好きだよ」
「それは、嘘じゃない?」

俺の大好きな史の笑顔に、ちょっとだけ赤みが差した。
恥ずかしそうに目を伏せて、そっとつぶやく。

「……凛の目を見て、嘘なんかつけないよ」

……さっき俺に背中を向けたのは、まさかそれが理由か?
それが本当だとしたら……いや、たとえ嘘だとしても。

俺は史を強く抱きしめて、その目元にキスをした。
「本当に可愛いな、お前……」
史は俺の腕の中で、くすぐったそうに身をよじる。
そんな史の全部が愛おしくて、俺はもう一度、今度は唇にキスをする。

「……大好きだよ、史」

その言葉には、エイプリルフールなんて関係ない。
嘘などまったく入る余地のない、俺の本当の気持ちなのだから。