ミラクル☆トレイン
[ 2011.03.02(水) 23:05 ]
SSあり

診断メーカーが怖い

先日、某淑女がtwitterの診断メーカー「バカ」シチュったーをやってみたところ、
『「想い人に」「屋上で」「ニヤニヤしながら」、「バカ」と言う新宿凛太郎』
という診断結果がでたそうです。

で、なんだか呼ばれてる気がした……というか呼ばれました。
診断メーカーは、たまにこういう萌えツボにピンポイントなお題を出してくるから困ります。

それを踏まえて、以下、新宿×六本木のSSです。
描写レベルはキス程度。


ある日の晩、俺は六本木に連れられて、ヒルズに来ていた。
二人で食事を楽しんだ後、六本木は俺を、ある場所へ案内してくれた。
そこは、ビルの屋上に作られた、オープンエアの展望施設。
なんでもこのタイプとしては日本一高い場所にあるらしく、東京を一望できる人気スポットらしい。
だが、今日は平日ということもあってか、俺たち以外には誰もいないようだ。

数歩先に立って俺をエスコートしていた六本木が、嬉しそうに振り返った。
「ここからの眺め、好きなんです」
闇の中に浮かぶ、色とりどりの美しい街の光。
中でも、ライトアップされた東京タワーがひときわ目を惹く。
同じ「眠らない街」とはいっても、俺の街とはまた違った趣がある。

「ああ、こりゃすごいな」
俺の言葉に、六本木は得意げに答える。
「でしょ? 夜景には結構自信があるんですよ。 正直……」
「『新宿さんには負けません』、ってか?」
六本木がお決まりの言葉を口にする前に、俺は先手を打つ。
まったく、毎日毎日、よく飽きもせずに張り合ってくるものだ。
まぁ、俺たちが地域に根ざした『駅』という存在である以上、仕方のないことかもしれないが。

「ま、あれだな。 ナントカと煙は高いところが好きっていうからな」
「……新宿さんだって、人のこと言えないじゃないですか」
六本木はむくれて反論する。
言葉を遮られたことと合わせて、少し機嫌が悪くなっているらしい。
せっかくのデートなのに、これはちょっとよろしくない。

「いや、お前に比べたらマシだと思うぜ」
「何でそう言いきれるんですか?」
「だってそりゃ、お前……」

眉が寄せられた六本木の額を、指で軽くこづく。
六本木はさらに不機嫌そうに俺を睨み返すが、たいした迫力はない。
むしろ、昼間にはあまり見られないその表情が可愛くて、どうにも口元が緩んでしまう。
「前はあんなに俺のこと嫌ってたのに、今じゃ恋人だろ? こんなに『バカ』なことってあるか?」
「……!」
六本木は口を硬く結んで、くるりと俺に背を向けた。

「……」
六本木は、そのまま立ちつくしている。
その表情はこちらからは見えないが、怒っているわけではなさそうだ。
声をかけるタイミングを計っていたら、ややあってその口が開かれた。
「……新宿さん」
「んー?」

「バカな恋人は……嫌いですか?」
六本木は俺に背中を向けたままで、肩越しに少しだけ振り向く。
かすかな笑いを含んだ声と、まっすぐな、それでいて誘うような眼差しが俺を捕らえる。

俺は六本木に近づいて、その細身の体を後ろから抱きすくめた。
それに対して、六本木は甘えたように身を委ねてくる。
どうやら、機嫌は改善されたらしい。
いや、もしかしたら、先ほどの不機嫌な態度ですら、計算された振る舞いだったのかもしれない。

別に俺は、それでも構わない。
お互いがお互いを自分のペースに乗せようとして、計略をめぐらせている関係。
言葉にすると、とんでもなく険悪な関係のように聞こえる。
だが不思議なことに、嫌悪感は覚えないし、居心地も悪くない。

「……ほんと、どうしようもないバカだな」
俺は六本木の耳元で、そっと囁く。
その言葉の半分くらいは、俺自身に向けて言ったようなものだ。
六本木の行動を許せてしまうのは、たぶん……惚れた弱み、というやつだ。
「バカじゃ、ない……」
溶けそうに甘い声で、六本木は先ほどの言葉と矛盾する文句を言う。
そのばら色の唇からそれ以上の言葉が紡がれる前に、俺の唇で塞いでやる。

「ん、ふ……っ、しん、じゅく、さん……」
深いキスの合間に、六本木は甘く俺の名前を呼ぶ。
この俺の行動も、おそらく想定済みなんだろう。

はたから見たら、俺はひどく滑稽に映ることだろう。
振り回されて、その手のひらの上で転がされているだけ。
他の奴にそんなことをされたら怒るどころじゃすまないが、六本木だけは別だ。
たぶん、何をされても許してしまうのだろう。
でも、それで構わない。

「……嫌いなわけないだろ、このバカ……」

だって、俺の『想い人』なんだから、な。