ミラクル☆トレイン
[ 2010.12.25(土) 19:04 ]
SSあり

めりーくりすます

さて、今年も「行事にかこつけてキャラをいちゃいちゃさせたくなる日」の筆頭がやってまいりました。
ですが、なかなかサザンライツのSSが仕上がらないので、クリスマス用は短編です。
年末だからって、こんなに仕事が忙しくならなくてもいいじゃない……。

12月の史ちゃんは、12日・19日・24〜25日と、毎週可愛がられちゃって大変そうです。

そういうわけで、以下、新宿×六本木のSSです。
描写レベルはキス程度(+α?)。

冒頭部分の元ネタは、★さんがお絵かきチャットで振ってきてくれたものです。
私が字を描くのが遅くて、史ちゃんに言わせた「予定なんて……」のセリフを説明する前に次の会話に移ってしまったので、フォローというか解説というか。


「史。イブは、予定空けとけよ」

クリスマスを目前に控えたある夜、僕は新宿さんにそう告げられた。
話が飲み込めないでいる僕に、新宿さんは楽しそうにイブの予定を話してくれた。
なんでも、スイーツの美味しいホテルのディナーを予約してあるらしい。
それから……そのホテルの部屋も、らしい。
どっちが本命なのかは、聞かないでおいてあげようと思う。

でも、クリスマスイブに予約が取れるなんて、ずいぶん前から予約していたんだろう。
その気持ちは、素直に嬉しい。
ただ、その言い方にちょっと引っかかるものを感じた。
「新宿さん。予定って、そんなの……」
「だーめ。これは決定事項だからな」
新宿さんは僕の言葉を遮って、そのまま顔を近づけてきた。

……これは、僕が言おうとしたことを完全に取り違えている。

「……新宿さん」
新宿さんの唇が僕の頬に触れる前に、僕は彼の肩を押し返した。
僕の反応があまりいいものでなかったのが意外だったらしく、新宿さんは不思議そうな顔になる。
「僕のイブの予定……『空けておけ』なんて言うんですね」
「……ん? 何か、まずかったか?」
やっぱり、分かってない。

イブ当日は、僕たちの乗っているミラクル☆トレイン内で、ささやかなクリスマスパーティが行われることになっていた。
でもその予定は、夕方くらいまで。
それから後は、思い思いに過ごすことができる。
そんな状況で、『空けておけ』なんて。

「イブに……新宿さんと一緒に過ごす以外の予定が、あると思ってるんですか?」
僕は言葉をぶつけて、そのまま新宿さんに背を向けた。
背中越しに、新宿さんが息を呑むのが分かった。

ややあって、僕は後ろから新宿さんに抱きすくめられた。
「……ごめん」
むき出しの背中が新宿さんのぬくもりに満たされて、とても温かい。
少し汗ばんだ肌同士が、お互いの熱を直接伝えてくれる。
すごく、気持ちがいい。
「そんなんだから、女の子にモテないんですよ?」
僕は振り返らずに悪態をつく。
新宿さんは苦笑しながら、僕の肩を抱く腕に力をこめた。
「……そうだな。俺もまだまだ、修行が足りないようだ」

「あ、そうだ。新宿さん……」
僕は大事なことを思い出した。
でも、ツンと背を向けてしまった手前、ちょっと言い出しにくい。
「プレゼント……何か欲しいもの、あります?」
パーティで行われる交換会用のプレゼントは用意していたけれど、新宿さん個人に渡すものは用意していなかったのだ。
それを聞いた新宿さんが、耳元でくすくすと笑い出す。
「お前こそ……そんなんじゃモテないぞ」
「……そうかも」
つられて、僕も笑っていた。
背中の温かさが、心まで伝わってくるみたいだった。

「で、何が欲しいんです?」
僕が再度尋ねると、新宿さんは僕の肩口に顔をうずめて、つぶやいた。
「史が欲しい」
「……」
その答えは、予想していなかったわけじゃない。
でも本当にそう答えられてしまうと、僕としても反応に困る。
新宿さんは前もってディナーを用意してくれていたのに、僕から何も渡さないというのも、格好がつかない。
「そんな安上がりなので、いいのかなぁ……」
「何言ってんだよ」
新宿さんが顔を上げて、僕を覗き込んだ。
綺麗な菖蒲色の瞳でまっすぐ見つめられると、一瞬息が止まりそうになる。
こればっかりは、未だに慣れない。
「……値千金、だよ」
新宿さんの唇が、そっと僕の唇に重なる。

ぎゅっと押しつけられただけのキス。
それなのに、唇が合わさった場所から溶けていってしまいそうで……僕は思わず目を閉じた。
その僕の頬に手をそえて、新宿さんはもう一度キスを落とす。
触れ合っている肌が温かくて、それから、こうしていることがとても嬉しくて。
体のすみずみまで幸せが満ちていくようだった。

些細なことが、とても大切なことなんだと気づかせてくれる。
そう、だから僕は、この季節が好きだ。
「クリスマス……楽しみですね」
僕がつぶやくと、新宿さんは僕の頭をふわりと撫でた。

大好きだ。
こうして撫でてくれる手も、僕の名前を呼んでくれる声も、全部。

大好きな仲間たちとお祝いして、大好きな甘いものを食べて、大好きな人と一緒の時間を過ごす。
きっと、ありったけの『大好き』に囲まれたクリスマスになるんだろう。
「待ちきれないな……」
それは僕の言葉だったのか、それとも新宿さんの言葉だったのか。
遠足の前日の子供のようなドキドキ感を胸いっぱいに抱え込んで、僕たちはまた、どちらからともなくキスをした。